田村今回は「パリ五輪の栄養管理」に続き、ENEOSサンフラワーズチーフマネージャーで管理栄養士の小松佳緒里さんにENEOSサンフラワーズでの栄養管理について聞いてきました。
ENEOSサンフラワーズでの栄養サポート
——チームではどのような栄養サポートをされていますか。
「私が担当しているのは遠征先ホテルの献立チェックや遠征先の補食の準備、相談があった場合の選手へのアドバイスですね。」
——選手とは普段どのようにコミュニケーションをとっていますか?
「普段の会話からじゃないと分からない部分もあるし選手はいきなり食事や栄養のことを言われても困っちゃうと思うんですよね。なので普段のコミュニケーションを大事にしていますね。」
いきなり栄養に関して正論を言われても選手が実践に結びつけられるとは限らない。そのため普段の会話から食事に関する悩み事を聞き出してアドバイスしているという。
「少しでも体調が悪そうだったら『どうしたんですか?元気ないじゃないですか?』みたいな感じから入って体調の変化とか食事摂取量とかを雑談の中からさりげなく聞き出していますね。会話の中から『食べられないんですか?』とか聞くと『全然喉通らない。』と教えてくれたりします。」
「その流れから『メイバランス(少量高エネルギーのドリンク)っていうのがあって、このくらいカロリー摂れるんですよ!うちのおじいちゃんも飲んでたんですけど試してみてください!美味しい味があったら教えてくださいね!』みたいな感じでおすすめして手に取りやすいようにするとか、元気が出るように差し入れするみたいな軽い感じで試してもらってますね。”栄養指導”に感じないようになんとかできないかなっていうのはいつも意識してます。」
確かに”栄養指導”と聞くとやや堅苦しかったり、食事にダメ出しされたりするんじゃないかといったイメージを持つ人もいるだろう。小松さんはもっと気軽に栄養の話ができるよう意識している。
他にも、プロテインの味が苦手で飲めない選手にはこうアプローチしていたという。
「『オレンジジュースにクリアタイプのプロテインを入れると良い!というのを記事で見たんですけど1回飲んでみてくださいよ!』と選手に言うと『じゃあお前が飲めよ~(笑)』とか言われたりするんで『いや私はもうこれ以上カロリー必要ないんで(笑)ちょっとだけ飲んでみてください!私練習後作っとくんで!』と言って実際に選手に飲んでもらったら『意外といける!』って言ってもらえたこともありましたね。」
加えてこんなことも意識しているそう。
『”何で飲めないのか、食べられないのか”理由を雑談の中で必ず聞くようにしていますね。やっぱり『ただ飲め!』と言われても嫌いなものは飲めないし、1回飲めたとしても続けられないじゃないですか。『これだったら飲めますか?これは?』と飲めるものを一緒に探していくことが大切ですね。選手の普段の食事シーンも観察して『あ、この選手はこういう時こういうものしか食べられないんだな』とかも把握するようにしてますね。』
——栄養サポートの面でやりがいに思うことはありますか?
「栄養面では、選手が増量できたり食べられるようになったりしたときは、自分のアドバイスのおかげとかはおこがましいんですけど少しは私のアドバイスが役に立ったのかなと思ったりして、これからも良いアドバイスができるように頑張ろうと思っています。」
選手の普段の食事
ENEOSサンフラワーズの食堂も見せてもらった。
体育館、寮、食堂は全て同じ建物内にあり、選手がバスケットボールに集中できる環境が整っている。
建物の2階にある食堂では、20年以上従事している矢代さんご夫婦が小松さんと連携を取りながら献立作成、調理、提供までを担当し選手の身体作りを支えているという。
お二人ともとても優しそうな方で、お話から選手への愛情を感じた。


冷蔵庫にはヨーグルトや牛乳などの乳製品、果物類が常備されていて選手はいつでも自由に摂取することができる。そのため増量したい選手などは食事量を自分でコントロールできるという。






昼食は午後の練習に向けてエネルギー源である炭水化物を多めに設定しているとのことだった。




3食ともアスリートの身体作りに必要な主食、主菜、副菜、牛乳・乳製品、果物の5種類が揃っている「アスリートの食事フルコース型」が提供されており、非常に栄養バランスが整っていることがわかる。
プロバスケ選手は長いシーズンをケガなく戦っていけるように、練習だけを頑張るのではなく、強い身体を作るための食事にも気を配っている。
海外遠征での栄養管理
——ENEOSで行く海外遠征ではどのようなサポートをされているのですか。
「韓国には毎年行くんですけど、初めて行くところだと実際に現地のお店に行って試食しますね。空港に着いてから団体OKな飲食店を現地ガイドさんと探して実際に行ってみて全部試食します。事前に現地ガイドさんから『ここのお店は辛くないよ!』とか情報をもらっていても日本人には辛すぎたり、1人前の量が少なすぎたり多すぎたりするので必ず試食するようにしてますね。なので海外だと私はずっと食トレしてます(笑)」






ときには、事前に遠征を予定している国に出向いて現地でどういったお店があるのか調査することもあるそう。現地ガイドさんの情報だけでは実際に食べてみると日本人の口には合わない場合もあるため試食しておくことが大切なのだとか。
——ENEOSでの海外遠征では補食はどうしていますか?
「海外遠征の時の補食は、基本おにぎり、バナナ、オレンジジュースですね。バナナとオレンジジュースはだいたいどこの国でも現地で手に入ります。お米は韓国だと日本のお米とほぼ変わらないので特に持参したりはしないですが他の国だと炊飯器とお米は必ず日本から持参しますね。事前に現地のホテルからメニューをもらったりして、味噌汁がないからインスタントの味噌汁を持って行ったり、レトルト食品なども持って行ったりします。」
写真提供:小松佳緒里さん


小松 佳緒里(Komatsu Kaori )
1994年秋田県生まれ。管理栄養士。小学3年生でバスケットボールを始め、中学時代には全国大会ベスト16を経験。地元の強豪・湯沢翔北高校では司令塔としてインターハイやウインターカップに出場。その後、東京医療保健大学へ進学。活躍が期待されたが2度のアキレス腱断裂に見舞われ、大学3年時にマネージャーへ転向。現在はENEOSサンフラワーズのチーフマネージャーを務める。また、2024年のパリオリンピックでは女子バスケットボール日本代表のマネージャーとしてチームを支え、国際舞台でも活躍している。










